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「不登校をめぐるいくつかのこと 最終回」・今月の1曲-垂水区|たかの発達リハビリクリニック

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たかの発達リハビリクリニックTOP > 院長通信 >  No.17   早田ひな、えらい 「夜と霧」再読」・今月の1曲
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No.17

2024.10
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早田ひな、えらい

少し前になるが、パリオリンピック卓球のシングルスで銅メダルをとった早田ひな選手が帰国後の会見で、「今、何がしたいですか?」と聞かれて、「アンパンマンミュージアムに行きたいのと、鹿児島の特攻資料館(知覧特攻平和会館)に行って、自分が生きているのと卓球ができているのが当たり前じゃないことを感じたい」と言ったことに対して、中国や韓国で非難や抗議の声があがっているというニュースがとりあげられていました。
中国では早田選手の人気は高いそうで、そのため反発も大きく、中国SNSでの早田選手のサイトのフォロワーが4万人減って、仲のよかった中国の卓球選手もフォローをはずしたそうです。

 

この発言の何が問題なのか、私にはさっぱりわからないのですが、ネットニュースによると、「特攻(の名前をあげること)は日本軍国主義による侵略の歴史の美化であり、早田選手の言葉は中国人の感情を冒涜した」ということらしい。
早田さんの発言のどこをどう読んだら、そうなるのか、あるいは、中国や韓国にはどれだけねじ曲がって情報が伝わっているのだろうかと思いましたが、有名雑誌のネットサイトで、「あの状況で、ああいう発言はするべきでなかった」「周囲が禁止ワードをしっかり教えておくべきだった」というようなことを言っている日本人ジャーナリストもいました。
彼は、それと反対の状況を考えてみよう。すばらしい熱戦を繰り広げた結果、日本人が勝利し、お互い心から健闘を称えあった。その後、帰国した中国人選手が会見で、「これから、何がしたいですか?」と聞かれ、「北京にある抗日戦争記念館に行って、生きていることを、卓球が当たり前にできていることは当たり前のことではないのだと感じたい」と言ったら、日本で大騒ぎになるだろう、そういうことなのだと言っています。
別にこう言われても私は、中国人は日本に強いライバル意識を持っているなと思うだけですが、まず、知覧特攻平和会館は、抗中戦争記念館ではありません。我が国の犯した悲しい歴史と過ちを風化させず、二度と繰り返さないための場所であることは日本人の誰もが知っていることです。
もし、正しい情報が伝わっていないとしたら、それこそ、禁止ワードやタブー視することなく、正確に伝えていくべきだと思います。

 

など、と言っていますが、私も、「知覧特攻平和会館」を初めて訪れたのは、最近のことです。
戦争をくり返してはいけません、若い命が失われるのは本当に悲しいことです、などという言葉では語りつくせないものがそこにはあります。とにかく一度行って、実際に見てきてほしいと思います。
上映されているビデオなども是非みてください。数時間があっという間に過ぎてしまいます。

 

年間訪問者数は2002年度の73万5千人をピークに、2016年度では35万9千人と半分以下に減少しているそうです。
必ずしも、訪問者数が戦争への関心度を反映しているわけではないと思いますが、多くの人が訪れることを望みます。

 

知覧特攻平和会館話は少しそれますが、日本では、芸能人やアスリートが少しでも政治的なことを言うとすごく批判されたり、テレビから見かけなくなったりする(干される?実態は知りませんが)ようで、すごく違和感があります。
例えば、アメリカでは、有名なミュージシャンや俳優が大統領候補者の誰々を支持するとかいうことも堂々と発言しています。ましてや、知覧特攻平和会館に行きたいというようなまったく政治的ではないようなことにすら、そういう発言やワードを避けるというのは異常だと思います。

特攻隊や戦争が悲惨であればあるほど、アンパンマンミュージアムと知覧特攻平和会館を並列にならべた早田さんの発言はすばらしいと思います。
アンパンミュージアムはちょっと高いけどね。


「夜と霧」再読

そういうこともあって、フランクルの「夜と霧」を読んでみる気になりました。精神科医のフランクルがアウシュヴィッツ強制収容所での体験を描いた本です。
世界的なベストセラーになり、多くの人がご存知だと思います。ただ、実際に読まれた人は少ないかもしれないと思っています。私もずっと昔にも読んだように思うのですが、ほとんど覚えていませんでした。少なくとも家に本はありました。
霜山徳爾訳のみすず書房の本です。ホロコーストがどんなに悲惨であったのかそのノンフィクションのような本だと思って読み始めて、ちょっと内容が違うぞ、固くてむずかしいと途中で挫折したのかもしれません。

解説によると、原題は、「強制労働者における一心理学者の体験」であり、「夜と霧」はまったく関係ありません。これがまず間違いの元ですよね。極限状態の人間心理を観察し、そこから、生きることの意味や心の持ちようを考える本です。

あらためて読んでみて、確かに、訳も硬くて読みにくい本です。おそらく著者が精神医学者、心理学者なので、原文も硬い言い回しで書かれているのだと思いますが、もう少し読みやすければなあと思います。
しかしながら、読んでみた結果は、非常におもしろい本でした。是非読んでみてください。私もこの本が理解できるほどに成長したということでしょう。知らんけど。

 

ここで、フランクルが述べているのは(ここから本の内容になります。読みたくない方は飛ばしてください)、食料も十分でなく、強制労働をしいられ、いつガス室におくられるかわからないという過酷な状況で生き抜けた人は、頑丈な体の人間ではなく、いかに過酷な環境であろうと、その中で、精神の自由と内的な豊かさを持った繊細な人間であったということです。

つらいつらい毎日の中にあっても、沈みゆく夕日と燃え上がる雲を見て美しいと思える人、芸術と呼べるようなもののない毎日のなかで、いつくかの歌、いくつかの詩、そういったものに心動かされる人、いつ死ぬかわからない収容所生活の中でも風刺的な冗談やユーモアを持っている人、そういう人が生き抜くことができた人だったということです。

それらは、自己維持のための心の武器だったのです。

強制収容所の中でもやさしい言葉をかける人はいたし、最後のパンの一片を与える人がいました。

強制収容所ではあらゆるものが奪われ、自分の生命の維持だけを目的とする無感情な生き物となったように見えていましたが、自らのうちの精神の自由、自分はどういう道を生き、最後に何を選ぶかという決断の自由を持ち続ける人はいた。
文字通り「収容所囚人」になるか、強制収容所においてもなお人間としてとどまり、人間としての尊厳を守る一人の人間になるかという決断は残されていたと書いています。

 

このあと、フランクルは、人間は、どのような心持ちで生きていくべきか、世界はどうように構成されているのか、苦悩や困難にどのように立ち向かうべきなのかというような考察をしていますが、それは、またの機会に考えてみたいと思います。

-今月の一曲-


今月は卓球ということで、石野卓球、電気グルーヴです。

 

電気グルーヴ 『Shangri-La』

 

シャングリラとは、ジェームズ・ヒルトンの小説「失われ地平線」にでてくる理想郷のことだそうです。チベットが舞台の設定だそうで、中国はチベット族自治州の一部をシャングリラと改名したそうです。25年以上前の曲ですが、今聴いても新鮮です。
一度聴くと、2-3日はこの曲が頭の中で流れています。理想郷なのかもしれません。

 

著者 たかの発達リハビリクリニック 
院長 高野 真

小児神経科・リハビリテーション科・児童精神科
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