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「不登校をめぐるいくつかのこと 最終回」・今月の1曲-垂水区|たかの発達リハビリクリニック

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No.16

2024.9
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不登校をめぐるいくつかのこと  最終回

不登校について、これまで2回ほど書いてきましたが、まとまりのない、まだ続きがあるような終わり方で、実際、不登校になったらどうするのがいいのですか、という一番の問題点にあまり触れられていなかったように思います。ということで、今回、第3回です。

 

ただ、不登校絡みの問題でいつも思うことは、私は教育のことについて専門的な勉強をしたことはまったくないし、実際に教育の現場に立ったことも一度もないということです。
最近は、不登校だけでなく、教育相談的なこともよく受けるというか、外来の半分以上がそんな感じになっている印象ですが、何をどう答えたらいいのか私もよくわかりません。多くの医師にとっても、それは医者に聞かれてもというようなことが多いように思います。
もちろん、不登校に関しては、発達障害や精神科疾患が原因となっている場合もあるので、一度は医療機関を受診してほしいと思いますし、保護者の方が相談できるチャネルは多い方がいいとは思います。しかしながら、現在の不登校の50%以上が、原因のはっきりしない定型発達のこどもの不登校です。
この子がいかにして学校にいくという選択肢を選ぶか、あるいは、別の選択肢を選んでどう過ごしていくかについて相談すべきは、医師ではなく、教育の専門家だと思います。保護者やこども自身が相談できる教育の専門家や専門機関が必要だと思います。

 

それでも、少しはみなさんの手助けができて、いい方向へ向かっていけるよう、私もいろいろ考えてはいますので、私の思っているところを書いてみます。

 

これは、前回も書きましたが、ネットなどを見ていると、不登校は親が原因ではありません、しかし、不登校の親には共通の特徴があります、とあります。そして、こどもではなく、親へのアプローチでその点を改善することにより、不登校はよくなります、と続きます。
これを普通の読解力で読むと、不登校は親に原因がある、ということなりそうですが、そのことは、まあ、置いておくとして、その特徴というのは、1.過干渉・管理、2.過保護、3.感情的な非難、4.褒めて伸ばす、5.ルールや条件をつける、6.放任などだそうです。
つまり、不登校になる親は、すぐ怒るか、褒めて伸ばすかのどちらか、あるいは、過保護かほったらかしかのどちらかのようです。これは、「犯人のプロファイリングを行うと、犯人は単独または複数で犯行に及んでおり、男性と思われるが、女性の可能性も否定できない20~30歳代と考えられるが、中年以降の場合もありうる」というやつです。
さて、これから何を学ぶべきでしょうか。もしこれが正しいとしたら、こどもが不登校になる親に特徴などないということ、すべての家でこどもは不登校になる可能性がある、親には原因がないということでしょう。

 

まあ、これは逆説的真理という高等戦術かもしれません。それはよしとして(何がよしかわかりませんが)、では、実際、こどもが不登校になったとき、どうすればいいのでしょうか。登校をすすめるべきなのか、休ませた方がいいのか、家での生活もある程度、制限というかルールを決めるべきなのか、こどもの言う通りにして、1日中、昼夜逆転でゲームやネットをやらせていいのか、等どうしたらいいのでしょうか。外来でもよく聞かれることです。

 

まず言えることは正解などありません。みんな困って、みんな悩んで、あれしたり、これしたり、行きつ戻りつしています。

 

親の立場として、大切なのは、

  1. 正解なんてない、みんな悩んでいる、わからないのは私だけではないと自覚すること。
  2. 不登校だから(あるいは、不登校にならないように)、こうすべき、という「すべき」という考え方はしないこと。同様に、私は、この子のために何をしてあげたらいいのか、とか、この子を思ってこうしてあげたいのだ、という考え方も捨てること。
  3. 悩んでいるし、よくわからない、でも、なんとかなるよ、あなたを信じているからという姿勢をみせること。

だと思いますが、でも、これも正解はないのでよくわかりません。

 

最近は、無理して登校をすすめない方がいい、休めばいい、つらいときは逃げたらいいといという流れが強いように感じますが、これはこれで正しい面があると思います。ネットや書籍を見ていても、不登校になったとき、親がしてはいけない行動として、無理に登校させる、励ます、学校にいけない理由にこだわる、等があり、朝は起こさない、友達の力を借りて登校しようとしない、アドバイスはしない、ゲームやネットを制限しない、などとあります。

ケースバイケースとしか言いようがないですが、こういうのを見ていると、私はどちらかというと、登校を推している派、生活にある程度の制限をかけている派かもしれません。 もちろん、不登校に明確な理由がある場合、例えば、いじめを含む友達関係とか、先生が嫌、怖いとか、そういう場合は、原因が改善(表向きだけかもしれませんが)されれば、早期に再登校が可能なので、こういうケースは、無理して行かせず、休ませた方がいいと思います。その上で、問題は解決できることをこどもに伝え、その努力をしていることをわかってもらえればいいと思います。

もちろん、クラスを変わるとか、担任の先生を変えてもらうとかはできないわけですが、学校と話をして、こういう対応ができたよということで早期の登校を目指した方がいいと思います。

同じように、不安が強かったり、情緒的に混乱して登校できないようなケースでは、学校は休んで、休息が必要ですし、精神科的な治療が必要かもしれません。

 

では、今の不登校の多数派である、明確な原因は不明、本人もわからないけど行きたくないというケースはどうするのか。
最近は、心理士や医師から、心のエネルギーがなくなっている状態ですというような説明をよく聞くようになりました。心のエネルギーは子ども達が外に向かって立ち向かうエネルギーです。
外で頑張り屋さんのお子さんほど知らず知らずのうちに心のエネルギーがなくなり、突然、電池が切れたようになるのです。今はそれを充電する時間です。しばらく、お休みして心のエネルギーが貯まっていくのを見守りましょう。というような説明です。確かにこういうケースはありますし、私もあまり使いたくはないのですが、似たようなことは言ったりもしています。でも、何でもかんでも心のエネルギーではないだろうとも思います。

 

私が、ある程度長期不登校になっているお子さんの目指すところの第一点は、とにかく、こどもと親が心穏やかに過ごせることです。
そのために、外来でお話しすることは、

  1. とにかく、君が心穏やかに、楽しくすごせることを望んでいる。
  2. 規則正しい生活はした方がいい。夜寝て、朝起きる。朝起きたら、日の光を浴びる。3食食べて、運動はした方がいい。
  3. 運動を兼ねて、時々、外には出る。
  4. 学校のことは置いておいて、普通の親子関係を続ける。
  5. 1日何をして過ごすかを(親と相談して)自分で考える。
  6. 学校は行かなくてもいいが、学校で学ぶことはいろいろある。勉強もそうだが、嫌な子がいたり、やさしい子もいたり、先生とかいう立場の人がいたり、その中ですごすことは、大人になって社会で生きていくための練習でもある、でも、学校へ行くのが楽しいと思えることが一番である。
  7. だから、落ち着いたら、学校がむずかしそうなら、学校でなくてもいいが、お昼間、同年代の子がいて、そこで、話し合ったり、何かをしたりするような場は必要なので、そういう所へはいくようにした方がいい。

 

ただ、結局、学校が手っ取り早いだろうということで、私は、ちょっと登校を推している感じになっていると思います。それが、いいことがどうかはわかりません。

 

あと、最後に一つ、不登校になる親に特徴があるとは私は思いませんが、不登校になったこどもがうまく戻ってこれるか、これは同じ学校に再登校できるようになるかということだけではなく、別の形でも、心穏やかに、社会に戻ってこれるかということですが、ということに関しては、重要なことがあるように思います。

それはこの状況を受け入れるということです。よく不登校の受容とか書かれていますが、どういうことかみてみると、ありのままの自分を受け入れること、自己評価や他人からの評価から解放され、自分が自分であることを認め、受け入れることとあります。
親の立場で言えば、学校に行こうが行くまいが、この子の価値や本質は変わらない、無条件にその存在自体を愛して、受け入れているという姿勢だそうです。これは確かに素晴らしいことだと思いますが、ありのままの自分を受け入れると言われてもなかなかむずかしそうな気がします。

 

私が思う受け入れるといことは、言葉にするのはむずかしいのですが、今の状況を理解し、そういう自分がいるのだと客観的にみつめられるということです。

 

こどもとしては、学校は行きたくない、あるいは、行けない、家でイライラしたり、ちょっとしたことでキレたりする、すると、また怒られる、ゲームしてるときだけが楽しい、学校というところがあって、そこに行っている子もいる、先生が電話してくるのはウザい、親が言うから病院も行ったけど、何これ。そういういろいろなことを体でわかるというか、今の自分はこういう状況なのだなと理解する。

親の方でいえば、どうして学校に行かないの、ちょっと注意したら、キレて暴れるし、ゲームをしている音を聞くだけで、私がイライラする、私だけがいろいろ苦労しているのに、配偶者からは何の協力も得られない、頭ごなしに起こるだけだ、病院にも行ったけど、別に解決策やいいアドバイスがもらえるわけでもない。そういう状況にいるのだと理解し、イライラしている自分がいるなとか、こんなの怒る方が当たり前だよね、と客観的にみつめることです。
自分の状況や自分の態度を、いいとか悪いとか価値判断せずに、こういう状態であること、そこに私という人がいるのだなと理解し、できれば、そういう私を愛してあげることです。

 

例えば、私の外来に通ってきていただいても、何かいいアドバイスや方法があるわけでもないし、何かどうするということもない、率直に言っていいことがあるわけではありません。まあ、それでも定期的に通院してくれている方は少なからずおられます。
とくにいいことがあるわけではないのに、車なりバスなりでやってきて、歩いて入ってきて、何となく無力感をもって帰っていく、こどもの方は面倒くさいことが終わったよかったと帰っていく、こういうことを繰り返すうちに、いろいろなことを受け入れられるようになっていくのかもしれません。そういう意味では少しは意味のある外来なのかもしれません。
ただ、先にも述べたように、本来は、ちゃんとした教育の専門家や教育系の心理士に継続的に相談できる場所が確保されるべきだと思います。そういうシステム作りが必要だと思います。

 

20再現在の就学・就業状況最後に、不登校だった少年・少女はどうなるのか?文部科学省の調査があります。
20歳になったとき、学校にも行かず、働きもせずとなっている人は、不登校児童の2割弱です。これを多いとみるか、少ないとみるかは人それぞれだと思いますが、多くの人は社会でちゃんと生きていっているのだと言っていいのではないかと思います。いかがでしょうか。

 

 

 


-今月の一曲-


不登校の子も不登校の親も不登校に関わる教師も臨床心理士も医師も、その他いろいろな悩みを抱える君にも、すべての人にこの言葉を贈ります。

 

君が乗り越えた壁はいつか君を守る盾となる

 

ケツメイシ「ライフイズビューティフル」 (Youtube.com)

 

著者 たかの発達リハビリクリニック 
院長 高野 真

小児神経科・リハビリテーション科・児童精神科
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