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22「認知行動療法」について/認知行動療法の実際・今月の1曲-垂水区|たかの発達リハビリクリニック

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No.22

2025.3
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「認知行動療法」について

「行動療法」について書いたときに、「認知行動療法」という言葉も出したのですが、今回は、その「認知行動療法」です。といっても、私は、「認知行動療法」について、セミナーを少し聞いたり、本をちょっと読んだという程度で実際的な経験はほとんどないので、おかしな記載もあるかもしれません。

 

ところで、2月中旬以降は寒い日が多かったです、こたつから出られず、DVDや録画してあるテレビ番組などを見ていたりしていました。そこに、全然記憶にないのですが、「シュリンク」とかいうドラマが録画されていました。NHKで放送されていたドラマのようで、精神科医を主人公にしたものでした。
医療系ドラマは、一応専門家?なので、どうしてもいろいろ突っ込みどころが目について、これもちょっと笑えるところもあったのですが、それなりによくできていたように思います。その中で、認知行動療法の7つのコラム法の記録表を渡して、今回の宿題です、やってみてくださいというような場面がありました。

しかし、このドラマで特筆すべきところは、そこではなく、看護師が土屋太鳳さんだったところです。土屋太鳳がクリニックの看護師なら、そりゃ毎日働きたくなりますよ。僕もちゃんと働きます。3話だけ(?)のドラマで、詳しい設定は語られていないのですが、主人公は大学の医局にいた非常に優秀な精神科医だったようですが、アメリカ留学後、なぜか町のひなびた診療所でたった一人で細々と診療を開始します。「お前の頭脳は世界のためにいかさないといけない」と大学に戻ってくるように友人が説得しますが、彼は「いや、それより大切なものがある」とか言って断ります。そりゃそうですよね、土屋太鳳と働くことの方が大切ですよね、きっと、僕もそうします。
そして、主人公の医師は、同じく何かちょっと訳ありの感じでその診療所に勤めることになった看護師の土屋太鳳に、「あなたも精神科看護師として、真剣に働いてみるつもりはありませんか」というようなことを言うのです。きっと、僕も言うと思います。認知行動療法も真剣に勉強します。

 

さて、そんなこんなで(何のことかわかりませんが)「認知行動療法」です。

 

この場合の「認知」とは、ある物事や出来事にたいする考えや感じ方、とくにある出来事に対して言葉で表現することができる考えです。人間は成長するにつれてその人特有に形成された感情や考えをもっています。それは、ときに、大きな先入観や偏見や歪みをもっていたりします。「認知行動療法」はそうした認知の歪みに焦点を当てて、それを修正することで症状を改善させる心理療法です。

「認知行動療法」は、いわゆるエビデンス(科学的根拠)のある治療法として推奨されています。
現代の医学では、EBM(Evidence-based Medicine、根拠に基づく医療)と言われる、科学的な検証がなされ、有効であることが統計学的にも示された医療が行われます。例えば、ある薬の効果があるかないかに関しては、対象となる患者を、作為なく、実際の薬を飲む人(実薬群)と偽の薬を飲む人(偽薬群)とに分け、医師も本人もわからない状態で治療を行います。
その結果を第3者が統計学的な手法で検討し、有効かどうかを判定します。その結果、有効であるものを科学的に根拠のある治療としています。 しかしながら、精神科の心理的な治療法は薬物治療と違って、医師も患者もわからずに本治療と偽治療を分けるということができないので、科学的な根拠を示すことがなかなかむずかしいです。
その中で、「認知行動療法」は、うつ病、パニック障害、強迫性障害、薬物依存症、摂食障害などに、例えば薬物療法単独の場合に比べて、「認知行動療法」を併用する方が有効であることが示されています。それ故、「認知行動療法」がすすめられます、というような言葉を書籍や医療相談のようなものでもよく見かけるのですが、現状、実際に行えるところが非常に少ないというのが問題となっています。当院でも、「認知行動療法」は行えません。

認知行動療法の実際

行動療法では、「こころ」を抜きにして、行動を変えれば、「こころ」や認知が変わると考えたが、それほど単純な話ではないというのは当然のことです。報酬と罰だけで、人間の行動を変えていくことはできません。一方、「こころの問題」を深堀りする精神分析では無意識を探るわけですが、精神分析から得られる理解は、「本当なの?」「だから、どうなの?」というような実証性や客観性に欠けるという点が問題です。また、そこからどう意識や認知、行動を変容していくかということにはつながりにくいところがあります。

認知行動療法では、日常生活で私たちが意識している(言語化できる)思考や認知や感情に焦点を当てるので、誰にとっても了解可能でわかりやすいものです。先にも述べたように人はそれぞれ各人の認知のパターンをもっており、認知の癖やゆがみがストレスや日常生活に支障を引き起こし問題となることがあります。認知や行動は変えることが可能なものであり、とくに認知のあり方を見つめ直し、変えていくことで行動変容を起こし、抑うつや不安や強迫症状などを改善することができると言われています。

以上のように、「認知行動療法」は「行動療法」というよりは、認知療法に面が強い治療法だと私は思います。ただ、認知行動療法というのは総称で、いろいろな方法が派生、発展してきています。

 

「認知行動療法」の中で一番よく知られているのはコラム法だと思います。
今回は、コラム法について、少し詳しく述べてみたいと思います。コラム法については書籍やネットで多くの情報がありますので、それらも参考にしていただければと思います。
コラム法には、「3コラム法」「5コラム法」「7コラム法」などがあります。1枚の紙に書かれたいくつかのコラム(枠線で囲まれたスペース)の中に自分の考えや感情を書いていきます。
例えば、7コラム法は、①状況、②気分、③自動思考、④根拠、⑤反証、⑥適応的思考、⑦気分の変化の7つのコラムからなります。それぞれどのようなことかと言いますと、

 

  1. 状況:嫌な気持ちになったり、不安になったり、今自分が困っている感情や思考におそわれたときの出来事を書きます。
    何があったか事実のみを記載します。
  2. 気分:そのときの気持ち感情を、最大を100点として何点か数値を書く。複数個書いて構わない。例えば、悲しみ80、不安60、恥ずかしさ50などです。
  3. 自動思考:そのとき(その出来事があったとき)、パッと浮かんだ考えやイメージを書きく。そのとき感じたことをそのまま書きます。
  4. 根拠:その自動思考に至った理由を書く。
  5. 反証:自動思考よその根拠とは矛盾するような、反対の事実を書く。
  6. 適応的思考:上記を踏まえ、自動的に浮かんだ思考ではない柔軟な考え方、バランスのとれた思考を書く。

 

よくある、例で簡単にまとめると、以下のようになります。

<状況>

朝、〇〇ちゃんに、「おはよう」と挨拶したのに、返事がなかった。

<気分>

落ち込み80、悲しみ70、怒り60

<自動施行>

無視された。嫌われている。クラスのみんなからも嫌われているのかもしれない。腹が立ってきた。

<根拠>

向こうは友だちと楽しそうにしていた。この間もあ曽ぐ約束をしていたけど、遊べなかった。

<反証>

昨日は挨拶してくれた。遊べなかったのは理由があった。今日もクラスのみんなと普通に話をした。

<適正思考>

私の声も小さかったし、友達と一緒にいたから、聞こえなかったのかもしれない。

<気分の変化>

落ち込み50、悲しみ30、怒り10

コラム法は簡便で自分で行うこともできるものですが、結局自分の認知や自分の世界観から出ていけないということになりがちなので、他人に目を通してもらうということは重要だと思います。当然のことながら、経験豊富な臨床心理士との対話から得られるものは非常に大きいです。実際の認知行動療法は、1回30-50分程度のセッションを週1回、計6-20セッション行うそうです。

 

私が個人的思うには、「適応的思考」がどうしても優等生的な決まりきった答えになってしまうところが問題だと思います。優等生的な「適応的思考」はみんな頭では理解しているわけで、結局それが実生活や実体験の場につながっていかないように思います。優等生的な「適応的思考」からは何も生まれないのではないでしょうか。また、自動思考がなぜ生まれてくるか、そこのところが問題であり、そこに介入しない限り問題は解決しないようにも思います。

 

しかしながら、自分の認知や感情や自動思考を書き出すことによって、自分の認知の癖や偏り、自分の感情や思考を客観的に見つめることができるという点は非常に重要であり、自分自身を客観的に見ること、その練習を行うということが認知行動療法の一番の目的かもしれません。

 

「3コラム法」では、①から③までつまり、出来事と感情と自動思考を書き出すだけですが、上に述べたように、書き出すことで、自分の考えや気持ちを客観的に眺めることができ、そのことだけで効果があると思います。「5コラム法」では、①-③と、⑥、⑦で行います。自分でやられるなら、「3コラム法」でもいいと思うのですが、ネガティブなことばかり書いて、気分が沈むなら、か「5コラム法」で適正思考を書くのもいいのではないかと思います。

 

「認知行動療法」から発展したものに、「スキーマ療法」があります。先に、自動思考がどうしてでてくるのか、というようなことを書きましたが、その基になっているものが「スキーマ」と呼ばれるものです。スキーマは、その人の思考パターンや行動パターンを形成する、無意識の世界観、価値観のようなものとされています。
したがって、スキーマをもとにして自動思考も形成されます。そのスキーマに介入するのが、「スキーマ療法」ですが、今の私の能力を超えているので、これ以上は触れません。また、「弁証法的行動療法」というのがあり、私はこれは有効なのではないかと思っていますが、そこまでの準備ができておらず、これ以上はやめておきます。ただ、いずれにしろ、こういう広い意味での認知行動療法を含め、実際このような治療を受けられるところがほとんどない、また受けられるところも高額なお金がかかるというのが現状の問題点です。


-今月の一曲-


日食なつこ「廊下を走るな」、いい歌です。「エピゴウネ」と迷いましたが、こちらにします。

油引きした教室や廊下を走って、滑るのを楽しみにしていたのを思い出します。昔の机は机の蓋を開けて物を入れる構造だったのですが、落書きだらけの机の蓋を意味もなくパカパカやっていたのを思い出します。

 

みんなでなかよくすること、人の領土に勝手に入らないこと、人のものを勝手にとらないこと、自分が悪かったら、ごめんなさいとあやまること、自分のことしか考えず、あれとこれとくれたら、助けてあげるけどなどと言わないこと・・・

 

そんなことあの頃に全部覚えたはずでしょう。

 

日食なつこ - '廊下を走るな' Official Music Video

 

著者 たかの発達リハビリクリニック 
院長 高野 真

小児神経科・リハビリテーション科・児童精神科
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