当院が開院してから1年となりました。
医者は病人や身体的・精神的に困っている人がいるから成り立つ因果な商売なので、みなさんのおかげで、1年もちました、とも言いにくいところがあるのですが、まあ、みなさんのおかげで1年続けることができました。ありがとうございます。
これからも少しでもみなさまのお力になれるようスタッフ一同努力したいと思います。よろしくお願いいたします。
今後もクリニックイベントなど細々と続けたいと思いますので、よろしければ是非ご参加いただければと思います。
不登校の話です。
私の外来に来られる患者さんも、当院開院初期には発達障害の相談やリハビリ希望が多かったのですが、今では、不登校関係の患者さんが非常に多くなっています。今回から、不登校について考えてみたいと思います。
まずは、不登校概論(?)です。
文部科学省の「不登校」の定義をみてみると、「何らかの 心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、 登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間 30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を 除いたもの」とあります。長期休みもありますので、単純に平均すると、月3日以上休むと不登校ということになります。
ということで、不登校ではないけど、行き渋りもあってと私の外来に来られる方は、週1回程度は休んでいるので、「不登校」にあてはまるということになります。
不登校の小中学生が過去最多の約29万9千人となり、前年より、22.1%増えたことが、昨年文部科学省から報告されました。内訳は、小学生が10万5113人、中学生が19万3936人で、全児童の3.2%にあたるそうです。
小学生では、58.5人に1人、中学生では16.5人に1人ということなので、小学生では、2クラスに1人、中学生では、1クラスに2人が不登校ということになります。増加の推移は下記のグラフです。
引用元:文部科学省ホームページ
不登校が、過去最高の30万人近くとなり、その約4割が、学校内外の専門機関に相談していなかったこと、また、いじめによる重大事態の発生件数も、923件と過去最多であったことから、文部科学省は「不登校・いじめ緊急対策パッケージ」を取りまとめました。
これの不登校対策部分の概要は以下のとおりです。
詳細は、文部科学省のホームページから見ることができるので、見ていただければと思いますが、相変わらず、お役所の文章はわかりにくいです。
私の知るところでは、すべての学校に、適応指導教室にあたるような教室、サポートルームを作り、そこに人もつけるという話です。
あとは、オンライン授業をできるようにすすめるということです。
これまで、適応指導教室は区に一つしかありませんでした。各学校での別室登校も、学校によっては、部屋がないので、別室登校はできません、保健室はそのようなための部屋ではありません(これは確かにそうですが)と別室登校ができない学校がありました。また、放課後登校をすすめても、放課後は対応しませんという先生や学校がありました(これも確かに、勤務時間外ではあります)。
現在、当院に通院している保護者の方の話をお聞きすると、この4月からは、ほとんどの学校で部屋は用意されているようです。
人はついていないようですが、これはとりあえずの前進ではあると思います。
ー不登校、および不登校のとらえ方の歴史ー
学校に行かないことについては、1913年にユングが記載したのが一番最初と言われており、ここでも、ユングかとちょっと驚きました。
その後、1941年には、アメリカのジョンソンが、学校に行けないということに対して、「学校恐怖症」ということばを使いましました。学校には行こうと思うが、不安が強くて行けない、とくに、母親や家庭から離れることができない分離不安が原因であり、一種の神経症的なものであるとしてとらえました。それまで、学校に行かないのは、怠け=怠学とされていたので、その意味では大いに意味のあることでした。しかしながら、その原因が、母子分離不安や不安神経症的なものはわずかであり、この言葉は使われなくなりました。
我が国ではその後、「登校拒否」という言葉が用いられるようになりました。しかし、登校を拒否しているわけではなく、学校には行きたい、行かなければと思うのだが、行けないというこどもも多く、不適切な言葉であるとされ、「不登校」が使われるようになりました。
ー不登校の分類についてー
不登校の原因を明確に分類するということに無理がありそうに思えますが、文部科学省では、「不登校状態が継続している理由」として次の7つを挙げています。
1.学校生活上の影響、2.遊び・非行、3.無気力、4.不安などの情緒混乱、5.意図的な拒否、6.複合、7その他。
以下に、これについて、述べます。
1.の学校生活上の影響とは、いじめや友達関係の人間関係の問題、先生との関係から不登校になったもの、また、学業不振、勉強が嫌というのもここに含まれます。
2.の遊び・非行型は、いわゆる非行グループというような悪い遊びを行い学校に行かないというものです。
3.の無気力型は、不登校の原因がはっきりせず、なんとなく登校せず無気力に過ごします。
一部の児童では、学校に行かないことの罪悪感もなく、送り迎え等を行えば、登校したりもしますが長続きしません。このタイプが最も多く、全体の半分近くを占めます。
4.の情緒混乱型は、母子分離や家庭から離れることへの不安が強かったり、神経症的な症状(全般性不安障害、強迫障害など)のため精神状態が不安定で登校できないものです。
真面目で完璧主義、優等生としてのプレッシャーを感じているタイプもここに含まれています。学校には行かないといけないと思っており、行こうとすると、頭痛や腹痛などの症状が起こることもおおいです。
5.の意図的な拒否は、学校に行く意義を認めず、自分の意志で不登校を選択するタイプです。
学校や先生に満足していないなどがあります。6の複合型は、上記の複数の要因がからみあっており、どれが主たる原因かわからない場合です。
この分類は言いたいことはわかるけど、ちょっと場当たり的にとってつけた感じはします。 これとは別に、長崎県立こども福祉医療センターの小柳憲司先生がされている分類があります。
まず、適応障害型と未熟・回避型の2つに大きく分類します。適応障害型は、不登校の原因として学校生活が苦痛なのだろうと予測がつくもの、未熟・回避型は、どうして学校に行かないのか、はっきりとした理由がわからないというものです。 さらに、適応障害型は、外因主体型、内因主体型、過剰適応型の3つに、未熟・回避型は外向型、内向型に分類されています。
こちらの分類は、分類の名前が今一つな感じはありますが(堅くてわかりにくい)、私としては臨床的にしっくりくる感じがします。 もちろん、不登校となっている状態は、一人ひとり異なっており、これらのタイプ分けに誰もがきっちり当てはまるということはないでしょうし、複合的な要因がある方が普通かもしれません。
ー不登校の受容についてー
不登校の受容は本来、本人にとっての受容なのですが、私の外来でも問題となるのは、保護者にとっての受容かなと思います。
人が、受け入れがたいことをいかに受け入れ、いかに克服するかのプロセスについて、よくモデルとされるものに、キューブラー=ロスの「死の受容」というのがあります。これは以下の通りです。
第1段階 「否認」
大きな衝撃を受け、自分が死ぬということはないはずだと否認する段階。
第2段階 「怒り」
なぜ自分だけがこんな目にあわなければいけないのかという怒りを周囲に向ける段階。
第3段階 「取引」
延命への取引。「悪いところはすべて改めるので何とか命だけは助けてほしい」あるいは「もう数ヶ月生かしてくれればどんなことでもする」などと死なずにすむように取引を試みる。また、神(絶対的なもの)にすがろうともする状態。
第4段階 「抑うつ」
運命に対し無力さを感じ、すべてに絶望し、抑うつのため何もできなくなる段階。
第5段階 「受容」
死を受容する最終段階。いちるの希望も捨てきれないが、最終的に自分が死にいくことを受け入れる。受容段階の後半には、突然すべてを悟ったようになり、希望とも別れを告げ、安らかに死を受け入れる。
不登校についても、これにならったような、受容のプロセスが言われることが多いです。「取引」の部分は省いてあることもあります。
というような説明がなされています。もちろん、みんながこのプロセスの通りに進むわけではないし、この過程のなかを行きつ戻りつしながら、いろんな意味でいろんなことを受け入れいくのだと思います。
ー不登校は親の責任かー
「不登校は親の責任」、「フリースクールは国家の根幹を崩しかねない」と言って叩かれたどこかの市長さんがおられましたが、今時、何を見ても、不登校は親のせいではありません、親の育て方は関係ありません、と書いてあります。
ところが、ネットで、不登校関連を調べたり、支援を行っているサイトを見てみると、「不登校は親のせいではありません」とある次の項目が、「不登校に影響しうる親の特徴」とか「不登校のお子さんの親御さんに共通する傾向性」とかだったりします。 この傾向性を知るだけで、親子関係は良くなり目に見える形で前進します。なぜかというとこの傾向性が不登校・引きこもりの根本的な原因となっているからです、とかあったりします。私の普通(と思われる)の読解力では、親のせいとまでは言わないが、親の考え方や育て方が影響している、という風にしか読めません。
ネットで拾ってきた、その親の特徴、傾向というものをあげてみます。 教育熱心、高学歴あるいは学歴コンプレックがある、プライドが高い、過干渉・過保護、放任主義、心配性、こどもを管理、批判が多い、感情的、ほめて伸ばす、などなど。
どないせーちゅうねん、という感じですね。これは、よくある「犯人は、男性と思われるが、女性の可能性も否定できない、20~30歳代の比較的若年犯と考えられるが、そうではないかもしれない、単独または複数で犯行を行っています。」というやつですね。これなら、日本中不登校ですよ。あ、それでこんなに増えてるのか。違う、違う。
ということで、長くなってきたので、以降は次回といたします。
The Boomtown Rats - I Don't Like Mondays (Official Video) (youtube.com)
著者 たかの発達リハビリクリニック
院長 高野 真
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