最近は、発達障害と並んで、愛着障害という言葉をよく見たり、聞いたりするようになりました。
今回は「愛着障害」について考えてみたいのですが、「愛着」とは何か、「愛着が形成される」とはどういうことか、「愛着障害」とはどういう状態でどう対応するのかというのは非常に大きな問題で、何冊も書籍がでています。
ここで簡単に論じられるような問題ではなさそう、というか私もよくわかっていなかったりします。
ただ、それらの書籍を読んでいて気になるのは、「愛着障害」の定義や使い方が、医療系の人と教育系の人とではかなり異なっているということです。このことについて少し考えてみたいと思います。
医学的には「愛着障害」は、重篤な養育放棄、虐待、重い養育過誤などの結果として生じるとされています。つまり、ネグレクトや虐待など、普通とはかけ離れたひどい養育環境では、「愛着」が形成されず、「愛着障害」が生じるということです。
愛着障害は、その症状から、「反応性アタッチメント障害」と「脱抑制型対人黄龍障害」に分けられており(それぞれの詳細は省きますが)、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)と非常に似通った症状を示し、症状だけからは、ASDやADHDと区別がつきにくいと言われています。
一方、教育系では、「愛着障害」をもう少し広い概念としてとらえています。
例えば、平気で嘘をついたり、自分勝手な理由で他人をいじめたり、自分の思い通りにならないとひどいかんしゃくをおこしたり、大人の例で言うと、あおり運転をしたり、クレーマーと言われるような明らかにおかしな難癖をつける人などは愛着障害を抱えていると説明されています。そして、医師が「発達障害」と診断している人の中には、少なからぬ「愛着障害」の人が含まれているとしています。
しかしながら、医療系の人にも教育系の人にも、共通している点があり、「愛着障害」は、親(養育者)、とくに、母親の愛情不足や育て方の問題ではないということを強調しているところです。
私の考えは、上記の分類(?)では、医療系の考えに近いものです。
「愛着障害」は非常に劣悪な環境で育たざるを得なかったこどもたちにのみ生じるものだと考えます。ただし、乳幼児期の問題ですので、それは、どうみても、育て方、育てられ方の問題に起因するものです。
育て方の問題ではない、愛情不足ではない、ということをとくに強調される教育系の人が、「愛着障害」を広い範囲でとらえ、これも愛着の問題、あれも愛着が形成されていないための問題、と言われるのには、私にはすごく違和感があります。
愛着形成は、育て方、育てられ方の問題であり、養育者の愛情や気持ちをこどもがうまく受け取ることができるかという問題だと思いますが、それは、通常の育児を行っていれば、普通に形成されるものだと思います。
愛着が形成されないのは、極度のネグレクトや虐待、頻回の養育者の交代による不適当な養育など通常ではない劣悪な状況で育てられた場合に限られるものだと思います。
ただ、教育系の人の言われる通り、明確な発達障害とも言い難く、「愛着障害」と思われるこどもたちもいます。また、理解のある愛情あふれる養育者のもとでも愛着が形成されていないのではないかとうケースも経験します。これについては、私は、保護者の方の育て方が悪いのでも、愛情が足りないのでもなく、お子さんの方に愛着が形成されにくい発達上の問題があるのだと思います。
「発達障害」と言われるこどもたちは、愛着が形成されにくく、愛着形成のための脳機能に何らかの障害があるというのが私の考えです。
では、そもそも、「愛着」とは何かという問題ですが、調べてみると、幼児期までのこどもと親(養育者)との間に形成される情緒的な結びつきや特別な関係のことと書かれています。
まあ、そういうことなのでしょうが、私が思う「愛着が形成される」というのは、世の中というか社会とかいうものがあって、自分はその中でこうやって泣いたり、笑ったり、怒ったりしているが、それは、そこそこいい感じである、人は基本的に信頼できるもので、自分もその人の一人である、みんなが楽しそうに幸せになるのはいいことだ、世界は本来平和で穏やかなものなのだ、というような価値観や感情的基盤がつくられることだと思っています。
こういう穏やかな気持ちで、他人を信頼しながら、楽しく生きていくのが普通なのだよと感じられることが、「愛着が形成される」ことだと思います。
これは、当然、こども側に形成されるということですが、実は、それは、子育てを通して、大人側にもあらためて形作られています。それが「愛着形成」や子育てのいいところだと思います。
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合言葉は雷雨決行 嵐に船を出す
引き返すわけにゃいかないぜ 夢が俺たちを見張ってる
著者 たかの発達リハビリクリニック
院長 高野 真
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