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発達障害は病気ではないのか?-垂水区|たかの発達リハビリクリニック

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No.05
2023.10
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-発達障害は
病気ではないのか?-

書籍やネットで「発達障害」について調べてみると、「発達障害は、病気ではなく、生まれ持った脳の特性です。」というふうに書かれています。発達障害は、病気ではないし、障害という言葉を用いるのも適切でないというのが現在の流れとなっています。診断名としての発達障害は、神経発達症と呼ばれるようになりました(当院では、「発達障害」という言葉を使っていますが、これについては、院長通信No.2をご覧ください)。
高名な先生が、発達障害は「病気」ではなく、生まれついての「脳の個性」と言えるもので、治るものではないし、治すべきものでもない、とおっしゃっています。

 

そうすると、発達障害は別に医療機関にかかる必要はないし、もちろん治すというものではないので、そのまま放っておけばいいし、発達障害を問題だと言っている人の方に問題があるということになります。
その一方で、発達障害が増えていることがしばしば取り上げられており、多くの小児科医や精神科医が、発達障害の診断を行い、多くの薬が処方されています。前々回に、医療系からみると、教育系の方が愛着障害という言葉を使いすぎる印象があると述べましたが、教育系の人からみると、医師は発達障害と診断しすぎだということだと思います。確かに、何でもかんでも発達障害と言い過ぎではないかと私も思っています。

 

私が、発達障害の診断で一番重要だと思うことは、その症状が、本人や周りの人の生活に明らかに重大な支障を引き起こしているということです。通常の発達(定型発達と呼ばれますが)の思考や行動からは、明確に逸脱しており、日常生活や社会生活に大きな問題を起こしている場合にのみ、発達障害と言えるということです。
私の考える(狭い意味での)発達障害は、
1.生まれつき、あるいは、生後早期の脳障害である。
2.そのため、思考や行動に大きな偏りや独特の特徴を有し、日常生活や社会生活に大きな支障を生じている、というものです。
つまり、通例から大きく逸脱した「異常」があり、そういう異常な点を有する「疾病」であるということです。
私は、医師として、異常や病気だと思うから、診断をつけて、治療をします。治すことができなくても、今よりいい状態になってほしいと薬を出したりするのです。発達障害を、「個性」や「特性」という曖昧な状態においておくのではなく、「異常」と捉え、厳密な診断のもと、「疾病」として扱うべきと思っています。

 

「正常」とは何か、「異常」とは何か、平均が正常か、そこから外れたものはすべて異常か、このようなことについては、大いに議論があることだと思います。また、平均に近づけることはいいことなのか、みんなと一緒になることが正しいことなのか、これも大きな問題だと思います。私は、発達障害の治療がみんなと一緒を目指すことだとは思っていませんし、そもそも、「みんな」というような実態はどこにもありません。ただ、脳の機能障害を原因とする大きな逸脱や偏りが、本人の生活に支障をきたすことがないよう、本人が持っている能力を十分に発揮できるように治療したいと思っています。実際のところ、私にそのような治療をする能力はなく、こどもの成長を手助けすることができればいいかなという程度だと思います。しかしながら、そういう意味で、発達障害はまったく治らないものではないし、治す必要がないものとも思っていません。

 

-今月の一曲-



今回は、正常とは何か、異常とは何か、みんな違ってみんないいなら、勝手に侵入してきて、戦争しかけてくる人も、人工衛星と称して、ミサイルを撃ち込んでくる人も、みんないいことになってしまいます、というようなことを考えてみました。
そんななかで、今月の一曲は、曲ではなくて、詩です。
これは、谷川俊太郎さんが、87歳で刊行された「バウムクーヘン」という詩集に入っている一篇です。87歳です、名作です。
集英社文庫の「二十億光年の孤独」の解説によると、谷川俊太郎さんは、集団行動になじめず、学校嫌いで、夜間部に転校して、なんとか高校を卒業したそうです。その後も、孤独で人づきあいの悪い少年は、大学に進学せず、模型飛行機づくりとラジオの組み立てと詩作に没頭していました。高名な哲学者である父から将来のことを問われ、仕方なく2冊のノートを見せました。それを見て衝撃を受けた父親がその詩を知人に送り、20歳のときに「二十億光年の孤独」が刊行されることになったようです。私は、谷川俊太郎については、「二十億光年の孤独」が最高傑作で、結局、それを超えられなかったかなとか、碌に作品を読むこともなく思っていたのですが、87歳でこれです。もう、そんなアホな自分を殴ってやりたいです。もちろん、痛いのでそんなことしませんが。

 

-いいたいこと-



谷川 俊太郎

わたしにはいいたいことがあるんだけど
それはほかのヒトがいいたいこととちがうみたい
いまもにわのうめのはなをみてるんだけど
ココロがはなからはなれてしまって
わたしはぼんやりしています

 

いいたいきもちばかりあって
なにがいいたいのかわからないから
なぜかいいたくないことをいってしまったりして
ちがう!っておもいながらだまりこむ
そんなわたしにハハはこまっている

 

ひとりでほんをよんでいると
わたしがいいたいことを
ほんのなかのだれかがいってることがある
なんかすっきりするけどくやしい
じぶんでいいたかったとおもって

 

うめのはなはいいにおいって
そういうだけでいいのかな

 

著者 たかの発達リハビリクリニック 
院長 高野 真

小児神経科・リハビリテーション科・児童精神科
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