当院にも他院からも紹介で患者様が来られることがあります。その医療情報提供書を見せていただいたり、世間での診断の様子を見聞きしたりしていると、中等度以上の知的障害のある方には、ほぼ自閉スペクトラム症という診断がついているように思います。
「自閉症」という言葉は、元々は統合失調症で強い陰性症状を示す患者に対して用いられた言葉でした。ところが、幼児で似たような症状を示す例があることが見出され、これも自閉症と呼ばれるようになりました。
後者が現在の自閉スペクトラム症(ASD)にあたるわけですが、当時報告された症例は、言語発達に大きな問題があり、ほとんどが、意味のある言葉を話すことができない症例でした。また、自傷行為や他害行為も目立っていました。
最初に報告された自閉症がそういう症例であったためか、自閉症は言葉が獲得できないというような言われ方をしていた時期もあったように思います。その影響か、現在でも中等度以上の知的障害があり、言語発達に大きな問題がある場合、ほとんど自閉スペクトラム症という診断がセットでついているような印象があります。
自閉スペクトラム症の診断には、対人関係の困難さと特徴的な思考や行動様式のこだわり、偏りがあることが必要です。
知的障害が重度な場合は、なかなか判断は難しいのですが、その点を見極めることは重要で、中等度以上の知的障害だから必ず自閉スペクトラム症を伴うものではないと思います。
診断基準にも、「症状が知的障害では説明できないこと」という項目が入っています。注意欠如多動症(ADHD)でも同じようなところがあり、知的障害による多動傾向なのか、注意欠如多動症の合併なのか判断がむずかしいところがあると思います。
当院は、「発達リハビリテーションクリニック」という名称です。
リハビリテーション(rehabilitation)という言葉について調べてみると、語源的には、re(再び)+ habilitare(適合させる)という意味で、失われた名誉や権利の回復を意味する言葉だったようです。
歴史的には、キリスト教を破門されたものの破門の取り消しや無実の罪の名誉回復や犯罪者の更生、社会復帰などに使われていたとのことです。
医学的に使われだしたのは、第一次世界大戦前後で、戦争による外傷などで、失われた機能を取り戻すための訓練として、リハビリテーションという言葉が使われだしました。
今は、一般の方でも、リハビリとして医学的な意味だけでなく、例えば、2週間仕事を休んでたしリハビリが必要だなとか、日常的に使われる言葉になっています。
現在の意味としては、外傷や病気による中途障害に対して、再び適した状態になる、本来の状態へ戻るための医学的訓練・治療ということだと思います。
一方、発達障害の場合は、持って生まれた問題であり、中途で低下した機能や能力ではなく、「リ(re-)・ハビリテーション」ではありません。発達障害のこどもに行うことは、持っている能力を十分に発揮でき、可能性をできる限り広げられるよう成長を助けることです。それは、リ・ハビリテーションではなく、あえて言えば、ハビリテーションとなります。
したがって、本来は、発達障害のハビリテーションと言うのが正しいですし、実際、ハビリテーションクリニックという名称のクリニックもあります。
ただ、ここで、リハビリテーションの定義をみてみると、世界保健機関(WHO)では、「 能力低下および社会的不利のある者を環境に適応するように訓練するだけでなく、彼らの社会的統合を促進するため、環境や社会、すべてに介入することを目的とする」と定義しています。また、国際障害者リハビリテーション協会の定義では、「障害をもった個人を援助し、可能な限りその機能を発揮させるように、そして社会のなかにインテグレート(統合)させるように、医学的・社会的・教育的・職業的な各手段を組み合わせて実行する過程である」とされています。
このように、リハビリテーションの概念は、単なる訓練ではなく、人が社会の中でその能力を発揮するために、環境や教育や人の心を変えていくプロセスであるというすばらしいものです。
この概念に心動かされたこともあり、Re(再び)ではないのですが、当院としては、リハビリテーションという言葉を使うこととしました。
「神戸突撃行進曲」
【歌詞付き】ヴィッセル神戸チャント・神戸突撃行進曲 2017.12.23 【天皇杯準決勝】
「神戸讃歌」
【ヴィッセル神戸|神戸讃歌】選手たちが「神戸讃歌」とともにサポーターと歓喜を味わう|2023明治安田生命J1リーグ第33節 (youtube.com)
著者 たかの発達リハビリクリニック
院長 高野 真
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